気温と湿度が高い時期は、細菌が繁殖しやすく食中毒が多発する季節です。
高齢者は加齢にともなう免疫力の低下や、味覚・嗅覚の衰えにより、食品の傷みに気づきにくいことがあります。発症した場合も重症化しやすく、下痢・嘔吐による脱水症には特に注意が必要です。
この記事では、暑い時期の食中毒の原因菌や感染経路、家庭でできる手洗い・食品管理・加熱調理時の衛生対策、発症時の対処まで解説します。
暑い時期に注意すべき食中毒の原因菌と原因食品

細菌性食中毒は夏から秋にかけての気温と湿度が高い時期に増える傾向があります。6月頃から増え始め、8~9月にピークが見られるため、暦の上で秋に入っても暑さが残る間は食中毒予防を続けることが大切です。
食中毒の原因菌
暑い時期に家庭で注意したい代表的な食中毒の原因菌は、次のとおりです。
- 腸管出血性大腸菌:加熱不足の牛肉や汚染された野菜が原因となり、3~8日後に激しい腹痛、下痢、血便などが現れます。
- サルモネラ:加熱不足の卵や肉などが原因となり、6~48時間後に嘔吐、腹痛、下痢、発熱などが現れます。
- カンピロバクター:生や加熱不足の鶏肉などが原因となり、2~5日後に吐き気、腹痛、水のような下痢などが現れます。
- 黄色ブドウ球菌:おにぎりや弁当などが原因となり、1~6時間後に吐き気、嘔吐、腹痛などが現れます。
- ウェルシュ菌:カレーや煮物などが原因となり、6~18時間後に腹痛や下痢などが現れます。
潜伏期間や症状には個人差があります。食べた直後に症状が出るとは限らないため、体調が悪くなったときは数日前までの食事も医師へ伝えてください。
食中毒の原因となりうる食品
原因になりやすい食品は、生や加熱不足の肉・卵・魚介類、常温に長く置いた弁当や総菜、作り置きのカレーや煮物などです。生肉や魚介類を扱った手指、包丁、まな板から、サラダや調理済み食品へ菌が移る二次汚染を防ぐための衛生管理も欠かせません。
暑い時期は、腸炎ビブリオが付着した刺身や寿司など、生の魚介類による食中毒が発生しやすくなります。高齢者や体力が落ちている方は生食を避け、中心部まで十分に加熱した食品を選ぶことで、食中毒予防につながります。
高齢者が暑い時期の食中毒で重症化しやすい理由

高齢者は、食中毒の原因菌に対する抵抗力が低下している場合があります。下痢や嘔吐による脱水症へ進みやすい点や、食品の変化に気づきにくくなる点も踏まえ、家族と一緒に予防策を確認しておくと安心です。
免疫力の低下
高齢者は加齢にともなって免疫力や臓器の働きが低下し、食中毒の原因菌に対する抵抗力が弱くなる場合があります。持病や低栄養、服薬の影響などが重なると、その傾向がさらに強まることもあります。
同じ食品を食べても、若い世代より症状が強く出る可能性があるため、本人の体調や持病を踏まえた食品の選び方と衛生管理が欠かせません。細菌が増えやすい暑い時期や、本人が体調を崩しているときは、食品を十分に加熱し、保存方法を普段より丁寧に確認することが大切です。
脱水症が起こりやすい
食中毒による下痢や嘔吐が続くと、体内の水分や電解質が失われ、脱水症につながることがあります。厚生労働省の「高齢者のための熱中症対策」によると、体内の水分量は成人が体重の約60%であるのに対し、高齢者は約50%とされています。高齢者はもともと体内に蓄えられる水分が少ない傾向にあるため、下痢や嘔吐が見られるときは注意が必要です。
また、メディカル・データ・ビジョン株式会社が医療機関の診療データを分析した結果、細菌性食中毒による入院割合は70代で7割を超え、90歳以上では9割に達しました。脱水症の発生割合を示すデータではありませんが、高齢になるほど入院を要するケースが増える傾向が確認されています。
参考:厚生労働省「高齢者のための熱中症対策」
参考:メディカル・データ・ビジョン株式会社「食中毒の実態:種類別・季節性・年齢別の特徴」
味覚や嗅覚の衰え
高齢になると味覚や嗅覚が低下し、食品の傷みを感じにくくなる方がいます。ただし、食中毒の原因菌は、においや味の変化が見られない段階でも健康被害を起こす場合があります。味覚や嗅覚が衰えているかどうかにかかわらず、感覚だけに頼らず食品を管理することが重要です。
「もったいない」という気持ちにも配慮しながら、家族が日付を書いたシールを貼るなど、処分する目安を共有すると管理しやすくなります。
家庭でできる暑い時期の食中毒予防対策

家庭での食中毒予防は、原因菌を「つけない・増やさない・やっつける」の3原則が基本です。高齢者本人にすべてを任せず、同居する家族や介護する方が食品の期限や冷蔵庫の状態を一緒に確認すると、対策を続けやすくなります。
手洗いを徹底する
食中毒の原因菌を食品につけないためには、石けんによる手洗いが基本です。手洗いが必要な主なタイミングは次のとおりです。
- 調理前と食事前
- 生の肉、魚介類、卵を扱う前後
- トイレ、ゴミ捨て、おむつ交換の後
- 鼻をかんだ後やペットに触れた後
指輪や腕時計を外し、指の間、爪の周囲、親指、手首まで洗って、清潔なタオルなどで乾かします。
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調理器具の衛生管理
食中毒を防ぐためには、調理器具を清潔に保ち、食品に応じて使い分けることも大切です。包丁やまな板は肉用・魚用・野菜用に分け、使用後は洗浄し、材質や製品表示に合わせて熱湯または塩素系漂白剤で消毒してください。
ふきんやスポンジも洗って十分に乾かします。高齢者本人による管理が難しい場合は、家族が交換や消毒を支えると衛生環境を保ちやすくなります。
食品の購入・保存・解凍の注意点
肉、魚介類、総菜などの温度管理が必要な食品は買い物の最後に購入し、長時間持ち歩かずに帰宅します。帰宅後は早めに冷蔵庫や冷凍庫へ入れ、冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下を保つことが目安です。
冷蔵庫へ食品を詰め込みすぎると冷気が回りにくくなるため、容量の7割程度に抑えます。高齢者の家庭では消費期限・賞味期限と開封日を確認し、古い食品を手前に置くと使い忘れを防ぎやすくなります。
冷凍食品は、使う分だけ冷蔵庫内や電子レンジで解凍し、解凍後は早めに調理することが望ましいです。常温で長時間解凍したり、冷凍と解凍を繰り返したりすると細菌が増える場合がある点に注意してください。
加熱調理と食べ残しの扱い方
肉や魚介類は表面だけでなく、中心部まで十分に加熱することが大切です。目安は中心部75℃以上で1分間以上、ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝は85~90℃で90秒間以上です。
カレーや煮物などの作り置きは、鍋のまま室温に置かず、浅い容器へ小分けして速やかに冷やし、冷蔵または冷凍して保存します。食べる前は鍋底からよく混ぜ、中心部まで十分に再加熱してください。
食べ残しも室温に放置せず、清潔な容器へ移して早めに冷蔵し、時間が経った食品や少しでも変質が疑われる食品は処分します。家族も責める言い方を避けて、安全を優先するよう声をかけることも必要です。
食中毒が疑われるときの対処と受診の目安

高齢者に下痢や嘔吐、腹痛、発熱などが現れた場合は、食中毒以外の病気も考えられます。自宅では脱水症や誤嚥に配慮しながら対応し、症状が強い場合や普段と異なる様子が見られる場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
食中毒が疑われるときの対処
食中毒が疑われる場合は、市販の下痢止めや吐き気止めを自己判断で服用せず、医師や薬剤師へ相談してください。特に下痢止めは、原因によっては腸の動きを抑えることで、病原体や毒素が体内にとどまり、症状が長引く場合があります。
下痢や嘔吐があるときは、一度に多く飲ませず、吐き気が落ち着いてから水分を少量ずつ補います。経口補水液を利用できる場合もありますが、水分量や塩分を制限されている方は、医師や薬剤師への確認が必要です。
嘔吐が続く方や嚥下機能が低下している方には、無理に飲食物を与えないようにします。急に吐いたときは顔と体を横向きにし、吐いた物が気管へ入らないよう姿勢にも配慮してください。
受診に備え、症状が始まった時刻、下痢や嘔吐の回数、体温、食べた食品、同じ食事をした家族の体調を記録します。食品の包装やレシート、残っている食品も、原因を確認する手がかりになる場合があります。
症状が強い場合は速やかに医療機関を受診する
下痢や嘔吐を繰り返す、水分を飲んでも吐いてしまい十分に取れない、尿量が減っている、高熱や血便がある、激しい腹痛が続く場合は、早めに医療機関を受診します。意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍いなど、普段と異なる様子も受診を判断する目安です。
嘔吐が止まらない、ぐったりして意識がはっきりしないといった症状がある場合は、救急要請が必要になることもあります。判断に迷うときは、かかりつけ医や地域の救急相談窓口へ連絡してください。
介護に関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
暑い時期の食中毒予防では、手洗い、低温保存、十分な加熱を日常の習慣にすることが大切です。高齢者は食中毒が重症化する場合があるため、食品の期限や作り置きの保存状態を家族も一緒に確認すると安心につながります。
ヤガミホームヘルスセンターでは、介護用品や衛生用品に関する相談を受けています。手洗い用品をはじめ、家庭の衛生管理に取り入れやすい商品はオンラインショップでも注文できます。
高齢の家族の暮らしや介護用品選びで迷ったときは、ヤガミホームヘルスセンターへお気軽にご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な助言ではありません。
※食中毒の症状や重症度、必要な水分量、適した飲料には個人差があります。持病や嚥下機能に不安がある場合や、症状が続く場合は、医師、薬剤師、管理栄養士などへご相談ください。
参考:厚生労働省「高齢者のための熱中症対策」
参考:メディカル・データ・ビジョン株式会社「食中毒の実態:種類別・季節性・年齢別の特徴」
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