弾性ストッキングやスリーブなどの弾性着衣は、リンパ浮腫や静脈疾患の治療のために医師の指導のもと使用される医療機器です。その一方で、「かゆみ」「乾燥」「赤み」といった皮膚トラブルを経験される方もいらっしゃいます。
特に長時間の着用や、季節の変わり目、汗をかきやすい夏場などは、皮膚への刺激や不快感を感じやすくなることがあります。また、むくみによって皮膚が引き伸ばされ薄くなることで、外部からの刺激に弱くなり、普段は問題のない刺激でも皮膚トラブルにつながりやすくなります。こうしたトラブルに対して、日常的な保湿ケアが重要です。
この記事では、弾性着衣によって起こる皮膚トラブルの原因と、皮膚を守るための正しい保湿の方法、夏を快適に過ごすための工夫について解説します。
なぜ弾性着衣で皮膚トラブルが?考えられる4つの要因

弾性着衣による皮膚トラブルは、一つの原因だけでなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って起こります。主な原因として考えられる4つのポイントを見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせながら、原因を探るヒントにしてください。
原因①:皮膚の乾燥とバリア機能の低下
冬場の乾燥した空気や、夏場のクーラーによる冷風などで皮膚は水分を失い乾燥しやすくなります。また、リンパ浮腫などでむくみがある場合は、皮脂の分泌や水分保持能力も低下し、さらに乾燥が進みます。
乾燥した皮膚は、表面の角質層が乱れ、外部の刺激から皮膚を守る「バリア機能」が低下した状態です。バリア機能が低下すると、衣類のわずかなこすれや汗などの刺激にも敏感に反応してしまい、かゆみや赤みを引き起こしやすくなります。そのため、日常的な保湿ケアで皮膚のうるおいを保ち、バリア機能をサポートすることが大切です。
原因②:着衣との摩擦による物理的な刺激
弾性着衣の着脱時や、歩行といった日常の動きの中で、衣類と皮膚の間には常に摩擦が生じています。この摩擦が物理的な刺激となり、皮膚表面の角質を傷つけ、肌荒れやかゆみの一因となることがあります。
例えば、ストッキングを履く際に、足首の骨ばった部分に生地が強くこすれてしまったり、日中歩いているだけでも、皮膚のすぐ下に骨がある脛(すね)の部分で生地が常にこすれ続けたりします。こうした日々のわずかな摩擦の積み重ねが、赤みや肌荒れにつながることがあります。
そのため、特にこれらの部分は重点的な保湿ケアが大切です。
原因③:継続的な圧迫による影響
弾性着衣の重要な機能である圧迫は、治療に不可欠なものです。しかし、この圧迫が長時間続くことで、皮膚の血行に影響を与えます。そのようなときは皮膚が敏感になる可能性があるので、皮膚のケアが重要となります。
原因④:むくみによって皮膚が引き伸ばされて薄くなる
リンパ浮腫などによりむくみが生じると、皮膚は引き伸ばされ、薄く、デリケートな状態になります。薄くなった皮膚はバリア機能が低下して傷つきやすく、さらに感染リスクが高まる可能性があります。そのため、皮膚を清潔な状態に保つことを意識しながら、保湿ケアを行うことが大切です。
保湿ケアが皮膚トラブル対策に重要な理由

これまで挙げてきた皮膚トラブルに対し、保湿ケアは有効な対策の一つとされています。その重要性は、ある研究によっても示されています。
弾性ストッキングを着用している高齢患者を対象に行われた研究では、保湿クリームを毎日塗った脚と、塗らなかった脚の皮膚の状態で比較が行われました。その結果、7日後に皮膚の状態が悪化した割合は、保湿クリームを塗らなかった脚が32%であったのに対し、塗った脚では11%と、約3分の1に抑えられました。
※この研究は特定の条件下での結果であり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
※効果には個人差があります。
この結果は、保湿によって皮膚にうるおいが与えられ、バリア機能の維持・改善に寄与することで、弾性着衣による摩擦などの物理的な刺激に対する抵抗力が高まることを示唆しています。日々の保湿ケアは、弾性着衣と上手に付き合っていくために大切であると考えられます。
参考:保湿クリーム塗布は弾性ストッキング使用高齢患者における下腿皮膚障害の増悪を抑制する
想肌(ここはだ)ボディ用保湿クリーム
9種類の植物エキスを配合した保湿クリームです。こっくりとしたテクスチャーで、乾燥が気になる肌にうるおいを与えます。

保湿ケアを効果的に行うための2つのポイント

保湿ケアの効果を高めるには、ただ保湿剤(クリームなど)を塗るだけでなく、「いつ」「どのように」塗るかが大切です。これからご紹介する2つのポイントを押さえることで、日々のケアの質が高まります。
ポイント①:清潔な皮膚に塗布する
保湿剤を塗る最も効果的なタイミングは、入浴やシャワーの後、皮膚が清潔な状態のときです。皮膚の水分が完全に蒸発してしまう前に保湿剤を塗ることで、角質層の水分を逃しにくくするフタをする役割を果たし、うるおいをキープしやすくなります。
ポイント②:優しく塗り広げる
保湿剤を塗る際にゴシゴシと強くこするのは、摩擦で皮膚に負担をかける可能性があります。保湿剤を手のひらで少し温め、皮膚を優しくなでるようにゆっくり塗り広げてください。これにより、皮膚への負担を減らしながら、保湿成分を角質層まで行き渡らせ、うるおいを与えます。
夏場をもっと快適に|ひんやりアイテムの活用法

基本的な保湿ケアで皮膚を守ることに加え、夏特有の蒸れや暑さといった不快感を和らげる工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。保湿だけでなく、清涼感を与える成分が配合されたアイテムを上手に活用することで、弾性着衣の着用感をより快適にすることができます。
外出先でのクールダウン
日中の活動で汗をかいたり、強い暑さを感じたりしたときには、その場で手軽に使える冷却アイテムが役立ちます。衣類の上からでもスプレーできるミストタイプなら、場所を選ばずにその場でクールダウンしやすくなります。
涼霧(すずみすと)ボディ用ミストローション
メントールなどのWクール成分配合で、肌にひんやりとした清涼感を与えます。持ち運びしやすいサイズで、外出先でのリフレッシュに適しています。衣類や靴下の上からも使用でき、汗のにおいが気になるときにも活用できます。

お風呂上がりのケア
ひんやりとした感触のジェルで皮膚をクールダウンさせることは、心地よいリラックスタイムを演出し、寝苦しい夜の快適な入眠をサポートします。1日の着用疲れを癒すケアとして、保湿と冷却が同時にできるアイテムを活用してみてはいかがでしょうか。
涼肌(すずはだ)ボディ用冷感ジェル
スーッと伸びて肌なじみが良い、さっぱりとした使い心地のボディ用保湿ジェルです。メントール配合で、お風呂上がりの体に心地よい清涼感が続きやすくなります。さらに、ヒアルロン酸やコラーゲンなど7つのうるおい成分が、冷房や紫外線で乾燥しがちな夏の肌の保湿をサポートします。

弾性着衣によるかゆみや赤みといった皮膚トラブルは、多くの方が経験する悩みですが、適切なスキンケアによって、それらの軽減につながる可能性があります。トラブルの原因となる「乾燥」「摩擦」「圧迫」「むくみによる皮膚の伸展」を理解し、日々の保湿ケアで皮膚のバリア機能をサポートすることが基本となります。さらに、より快適に治療を続けられるように、夏場は冷却効果のあるアイテムを取り入れてみてください。
介護に関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
弾性着衣による皮膚のかゆみや赤みなどの症状がある場合は、まずは医療機関にご相談ください。着用補助具や保湿アイテム、療養費に関するご質問やご不安がありましたら、ヤガミホームヘルスセンターまでお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。
※皮膚に異常を感じた場合は、使用を中止し、医療機関にご相談ください。
※効果には個人差があります。
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