在宅介護での排泄ケアは、日々の生活を支える重要な役割を担う一方で、介助するご家族の負担になりやすい場面でもあります。トイレ介助やおむつ交換など状況に応じた対応方法を知り、適切な介護用品を活用することで、衛生面や心身の負担を和らげることが期待できます。
この記事では、基本的な心構えから具体的な介助手順、負担を減らす工夫までをわかりやすく解説します。在宅介護を少しでも快適に続けるためのヒントとして、参考になれば幸いです。
在宅介護における排泄ケアの基本と心構え
在宅介護において「排泄ケア」は、介護する方・介護を受ける方の双方にとって、身体的にも精神的にも大きな負担となることがあります。介護を受ける側は、人の手を借りることへの羞恥心や申し訳なさを感じやすく、一方で介護する側も、排泄物の処理に対する抵抗感や、長期的な介護への不安を感じることがあります。
排泄は非常にプライベートでデリケートな行為です。そのため、本人の尊厳や羞恥心への配慮がとても大切です。介助中に面倒な素振りを見せたり、失敗を責めたりすることは、本人の自尊心を深く傷つけてしまいます。「大切に思っている」という気持ちを持って接し、穏やかな表情や前向きな声かけを意識することが大切です。
使用環境別│4つの排泄介助の正しい手順
排泄介助の方法は、本人の身体状況によって異なります。どの介助方法においても大切なのは、本人が自分でできることは、できる限り本人に任せるという姿勢です。ズボンを下ろす、パッドを外すなど、少しでも自分でできることを続けてもらうことが、自尊心や意欲の維持につながります。
トイレまで移動できる方のトイレ介助
移動時には、本人のペースに合わせて横で体を支えたり、腕につかまってもらったりして、安全に移動します。便座に座る際も「ゆっくり座ろうね」と声をかけながら腰を支えると、恐怖心が和らぎ、安心して座れます。
排泄中はドアを閉めてプライバシーを確保します。ただし、緊急時に備えて鍵はかけません。排泄音が気になる場合は流水音装置を活用するのも有効です。
【準備するもの】
- おしりふき
- 使い捨て手袋（必要な場合）
- 新しいおむつや尿とりパッド（必要な場合）
【介助の手順】
- トイレまで安全に移動する
- 安定した姿勢で衣服を下ろす
- 便座にゆっくり座るようにする
- 排泄中は、介助者は外で待つ
- 必要に応じて前から後ろへ拭く
- 衣服を整える
- 部屋まで安全に付き添う
ポータブルトイレでの排泄介助
移乗時は本人の脇に腕を入れ、体を支えながら立ち上がってもらいます。ゆっくり回転させて座ることで転倒を防げます。
においを軽減したい場合には、消臭剤や換気扇を併用すると効果的です。バケツの底にトイレットペーパーを敷いておくと、処理が楽になるのでおすすめです。
【準備するもの】
- ポータブルトイレ
- トイレットペーパー
- おしりふき
- 消臭剤
- 使い捨て手袋
【介助の手順】
- ベッドからポータブルトイレへ移乗する
- 衣服を下ろす
- 排泄中は介助者が席を外す
- 必要に応じて、前から後ろへ拭く
- 衣服を整える
- ベッドに戻る
- 汚物を処理し、バケツを洗浄する
ベッド上での便器・尿器を使った排泄介助
腰を上げられない場合は横向きにして便器を当て、仰向けに戻すと安定します。頭側を上げると腹圧がかかりやすく、排泄がしやすくなります。
【準備するもの】
- 差込便器または尿器
- トイレットペーパー
- おしりふき
- 防水シーツ
- 使い捨て手袋
- バスタオル（目隠し用）
【尿器（尿）の介助手順】
- 男性：仰向けや横向きで陰部に尿器を当て、本人に持ってもらう
- 女性：受け口を陰部に密着させ、必要に応じて介助者が手で固定する
【差込便器（便・尿）の介助手順】
- 防水シーツを敷き、膝を立てる
- 腰を上げてもらい便器を差し込む（上げられない場合は横向きから当てる）
- ベッド頭側を30度ほど上げる
- バスタオルをかけ席を外す
- 排泄後、便器を外し前から後ろへ拭く
寝たきりの方のおむつ交換
陰部を拭く際は必ず前から後ろへ行い、尿路感染を防ぐのがポイントです。横向きにすると、お尻全体を清潔にしやすく、皮膚の赤みやかぶれも確認できます。
【準備するもの】
- 新しいおむつ、尿とりパッド
- おしりふき
- 陰部洗浄料（必要に応じて）
- 保湿剤・皮膚保護クリーム
- 使い捨て手袋
- 防水シーツ
【介助の手順】
- 新しいおむつ・パッドを準備する
- 古いおむつを開き、陰部を拭く
- 体を横向きにしてお尻全体を拭く
- 保湿剤や保護クリームを塗る
- 汚れたおむつを体の下に丸め込み、新しいおむつを半分差し込む
- 反対側に傾け、汚れたおむつを抜き取る
- 新しいおむつを整え、仰向けに戻してテープを留める
排泄ケアの負担を軽減する介護用品の選び方
身体状況や使用シーンに合わせて、適切な介護用品を選ぶことが、本人と介護者双方の負担軽減につながります。
おむつ・尿とりパッドの選定ポイント
おむつや尿とりパッドは、本人の状態に合わせて選ぶことが大切です。自力で立ち座りできる方にはパンツタイプが適しており、寝て過ごす時間が長い方や、寝たまま交換が必要な場合には、テープ止めタイプが便利です。
尿量や交換頻度に応じて吸水量を選ぶことも重要です。夜間や長時間交換できない場合は吸水量の多いタイプが適しており、尿とりパッドを併用すれば汚れた部分だけを交換でき、手間やコストを抑えられます。
肌への優しさや快適性も重要なポイントです。弱酸性素材や消臭機能を備えた製品は皮膚トラブルやにおいの軽減に役立ち、漏れ防止ギャザー付きの製品を選ぶことで横漏れを防ぎ、安心して過ごせます。
PUサルバフレーヌケア ストロング
弱酸性素材で肌を守り、尿が触れにくい構造を採用しています。透湿性素材で蒸れを防ぎ、吸収ポリマーが気になるにおいを抑制します。軟便をキャッチするスペースもあり、快適なつけ心地を実現します。
PUサルバ安心Wフィット
2層の吸収体（Wフィット構造）がすき間を埋めて漏れを防ぎます。弱酸性素材で肌を守り、全面通気性シートで蒸れを防止。吸収ポリマーがにおいを抑制し、快適なつけ心地を実現します。
ポータブルトイレ・差込便器の選定ポイント
ポータブルトイレは材質や機能で使い勝手が変わります。プラスチック製は軽くて手入れがしやすく、木製や家具調タイプは、インテリアになじみやすく重量があるため安定感があります。
自立を支援する機能も重要です。ひじ掛けの高さ調整や前傾姿勢を取りやすいグリップ付きタイプは、本人の「自分でできる」を助けます。
差込便器は軽量なプラスチック製が主流で、冷たさを和らげるカバー付きもあります。こうした機能を組み合わせることで、介助者と利用者双方の負担を減らし、快適な排泄ケアにつながります。
ポータブルトイレFX-30 らくゾウくん ソフト・脱臭
移乗動作をサポートする0～30cmのひじ掛け高さ調節機能や、腹圧をかけやすい姿勢保持グリップなど、自立を支援する機能が充実。ワンタッチで便座の高さを調節でき、後片付けが楽な節水バケツも特長です。
差込便器（専用カバー付）
ベッド上での排泄をサポートする便器です。低重心設計で安定性に優れ、お尻の下へスムーズに差し込めます。
清潔保持とにおい対策に役立つ用品
おしりふきは、使用シーンに合わせて選ぶことが大切です。たとえば、トイレに流せるタイプはポータブルトイレの後始末に便利です。寝たきりの方には、1枚でしっかり拭ける大判・厚手タイプがおすすめです。
おしり洗浄剤には種類があり、「洗い流すタイプ」は陰部を清潔に保ち、「泡タイプ」はお湯がない場所でも使え、皮膚への負担を減らせます。
におい対策には介護に特化した消臭剤が効果的です。ポータブルトイレのバケツの水面に泡の膜を作るフォームタイプの消臭剤なら、においの発生を長時間抑制でき、排泄物を目立たなくする効果も期待できます。
消臭剤フォームタイプ
ポータブルトイレの水面に泡が広がり、約24時間、においを抑えます。排泄物を目立たなくする効果もあり、無香料で使いやすい消臭剤です。
専門家への相談で在宅介護の悩みを解決
排泄介助などの介護の悩みや負担は、ご家族だけで抱え込む必要はありません。専門家や公的なサービスに相談することは、介護を続けるうえでとても大切です。
たとえばケアマネジャーは、介護の専門家として本人やご家族の状況に合わせたケアプランを作成してくれます。排泄の悩みについても「どの時間帯に失敗しやすいか」「介助のどこが大変か」など具体的に伝えることで、訪問介護サービスの利用調整など、より的確なアドバイスやサポートを受けることができます。
地域包括支援センターは高齢者の暮らしを支える総合相談窓口として、介護に関する悩み全般に対応してくれます。介護のことだけでなく、福祉・医療・生活支援など幅広い相談先として活用できます。
また、介護保険を利用すれば、ポータブルトイレを購入したり、トイレ用手すりをレンタルできたり、住宅改修で取り付けたりすることも可能です。ひとりで抱え込まずに、勇気を出して専門家に悩みを伝えることが、介護する側・介護を受ける方の双方にとって、より良い生活につながります。
介護に関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
在宅介護における排泄ケアは、本人の尊厳を守りながら、介護者の負担をいかに減らすかが重要です。今回ご紹介した介助手順や介護用品の選び方を参考に、ご自身の状況に合ったケアを見つけてみてはいかがでしょうか。
ヤガミホームヘルスセンターでは、介護に関するさまざまなお悩みのご相談を承っております。排泄ケア用品の選定をはじめ、在宅介護でお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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