高齢の家族が食事中に食べ物をこぼしてしまったり、箸を使いづらそうにしたりすることはありませんか。食べることが難しくなると、本人の食欲が低下し、介助の負担が増えることもあります。

この記事では、そんな食事の悩みを解決する「介護用食器」と「食事用自助具^※」を紹介。症状に合わせた選び方から具体的な製品まで解説します。

※自助具とは、病気や障害、加齢による身体機能の低下を補い、日常生活動作を助ける道具のことです。

高齢の家族に介護用食器・自助具が必要な理由

「介護用食器」や「食事用自助具」は、手や指の動きが不自由な方でも食事がしやすいよう工夫された食器や道具です。加齢や病気で身体機能が低下しても、自分の力で生活を続けられるよう支える“自立支援”の観点からも重要な役割を担っています。

一般的な食器では食べ物をうまく口に運べず、こぼすことがストレスになり、食欲低下につながることがあります。介護用食器や自助具は「握りやすさ」や「すくいやすさ」に配慮されており、食事のストレスを減らして自立を促し、規則正しい食生活の維持にも役立ちます。

【症状別】介護用食器・自助具を選ぶポイント

介護用食器や自助具は、利用者の身体状況や悩みに合わせて選ぶことが大切です。そのためには、握力の低下、手の震え、片手のみ使用といった「食べにくさの原因」を把握する必要があります。

製品を選ぶ前に、食事中の姿勢や箸・スプーンの使い方、食べ物を口に運ぶまでの動作をよく観察し、食べにくさの原因を明確にすることが重要です。

握力が弱い・手の震えで持ちにくい方向けの工夫

握力が弱い方や手が震える方には、持ち手に工夫があるスプーンやフォークが役立ちます。柄が太いスポンジやシリコン製なら安定して握れ、またグリップ補助具を巻きつければ普段のスプーンや歯ブラシも使いやすくなります。

さらに、2本が連結した「ばね箸」や「クリップ箸」は、軽い力でつまめるため、手指の細かい動きが苦手な方に適しています。

片麻痺などで片手しか使えない方向けの工夫

脳血管疾患の後遺症などで片麻痺がある場合、片手で食事をする際に「器が動く」「すくえない」といった困難が生じます。

これを補うため、片手でも扱いやすい食器が開発されています。たとえば、裏に滑り止めがある食器や滑り止めシートを使えば器が安定し、縁に返しがついた皿なら、スプーンを沿わせるだけで食べ物をすくいやすくなります。

腕が上がりにくい・首が反らしにくい方向けの工夫

円背^※（えんぱい）や肩・肘の痛みがあると、腕を上げたり首を反らしたりする動作が難しく、コップで飲み物を飲むのが負担になります。その際は、日常動作を助ける食器を使うと便利です。

内部に傾斜があるコップや鼻が当たらない形状のコップなら、大きく傾けずに飲めるため、首や肘への負担を軽減できます。また、大きな持ち手つきの汁椀は、腕の力が弱くても安定して持ちやすいよう工夫されています。

※円背（えんぱい）とは：加齢や骨粗しょう症などで背中が丸く曲がった状態のこと。

おすすめの介護用食器・食事用自助具

機能性とデザイン性を両立した、一見介護用品とわからない製品も増えています。食事の時間が楽しくなるような、お好みの食器を見つけるきっかけにしてください。

こぼさず飲める「PH ストローカップ」

「PH ストローカップ」は、ベッドの柵に掛けられるうえ、手にフィットする2段階の持ち手つきのこぼれにくいカップです。

フタを回して補助持ち手の位置を調整できるため、握力が弱い方や左右どちらの手でも持ちやすい設計です。

カップ・フタ・ストローの3つだけの構成のため洗いやすく、お手入れが簡単です。ストローは柔らかく曲がるため、寝たままでも飲みやすい設計です。底が凸形状のため、飲み物を最後まで口に運びやすい工夫もあります。

PH ストローカップ　ブルー

軽い力でつまめる「箸ぞうくんクリア」

「箸ぞうくんクリア」は、親指と人差し指の間にグリップのヒレ状の突起を挟むことで、自然とテニスボールを握るような形で持つことができるお箸です。

指の機能が低下している方でも、握るような動きができれば、軽い力で箸を開いたり閉じたりして、食べ物をつまむことができます。箸先が自然に合うようにガイドする機構がついているほか、箸先の内側が平面になっているため接触面積が広く、食べ物をがっちりとつかめるよう工夫されています。

箸ぞうくんクリア　右手用　茶（22cm）

自分で食べやすい「すくいやすいスプーン」と「すくいやすいお皿」

「すくいやすいスプーン」は、スプーンの柄と先端（すくう部分）に角度がついているのが特徴です。握るだけで自然にすくいやすい角度になるため、手や口にフィットしやすくなっています。グリップは滑りにくく、スプーンの先端は口に入れやすい形状で、かつ深めなので、こぼしにくい設計です。

すくいやすいスプーン

「すくいやすいお皿」は、内側のカーブと角の形状により、食べ物が自然に一か所に集まり、スプーンですくいやすい構造です。

底には滑り止めがついているため、テーブルに置いたままでも食器が動きにくく、片手でも安定して食事を進められます。

使っていいね！すくいやすいお皿

介護用食器・自助具の購入前に知っておきたいこと

介護用食器や食事に関する自助具は介護保険の対象外で、購入費用は全額自己負担となる点に注意が必要です。

これらは介護用品を扱う専門店のほか、最近では、ドラッグストアやインターネット通販でも購入できます。製品選びに迷った場合は、ケアマネジャーや作業療法士、福祉用具専門相談員などに相談すると安心です。

介護用食器に関するよくある質問

介護用食器に関するよくある質問をまとめました。

Q1.介護用食器と普通の食器は何が違うのですか？

A1.介護用食器は、加齢や病気による筋力・握力の低下、麻痺などがある方でも、食事がしやすいようにさまざまな工夫が施された食器です。

具体的には、以下のような工夫があります。

• 持ちやすさ：弱い力でも持てるように取っ手がついていたり、柄が太くなっていたりする
• すくいやすさ：スプーンで食べ物を集めやすいように、縁に「返し」がついている
• 素材面での工夫：落としても割れにくく、軽量な素材を使用している

これらの工夫により、握力や動作が弱くなった方でも食事をしやすくなります。

一番の目的は、食べる方の「自分で食べたい」という意欲を支え、食事の時間を豊かにする「自立支援」にあります。

Q2.最適な自助具を選ぶ一番のポイントは何ですか？

A2.最も重要なのは、使う方の食事の様子をよく観察し、「なぜ食べにくいのか」を把握することです。

例えば、握力が弱く箸を落とす場合は、柄を太くするグリップや連結された箸を検討します。片麻痺で皿が動いてすくえない場合は、滑り止めがついて縁に返しのあるお皿を選ぶなど、状態に合った機能を見極めることが大切です。

選定に迷う場合は、ケアマネジャーや作業療法士、福祉用具専門相談員などに相談するのが安心です。

介護に関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ

食事は日々の活力の源です。本人に合った介護用食器や自助具を見つけることで、食事の楽しみを支え、ご家族の負担を軽くすることにもつながります。

ヤガミホームヘルスセンターでは、今回ご紹介した製品以外にも、食事をサポートするさまざまな介護用品を取り揃えております。福祉用具専門相談員が、お一人おひとりの状況に合った製品選びをお手伝いいたします。お気軽にご連絡ください。

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