※ブレストフォームとは、乳がん手術後に失われた乳房の形を補うための人工乳房・補整パッドのことを指します。左右差の解消や自然な見た目、体のバランスを整える役割もあります。

乳がんの手術後「どんな下着を選べばいいのか」と悩む方は少なくありません。特に、術後の敏感な肌や左右差に対応しながら、快適さと安心感を得られる下着やブレストフォームは、日常生活の質を大きく左右します。

この記事では、術後の下着選びで大切なポイントから時期に応じた選び方、ブレストフォームの素材や特徴までを、わかりやすく解説します。

乳がん術後の下着選び｜大切な3つのポイント

術後の下着選びでは、「からだ」「きもち」「価格」という3つのポイントが大切です。
体調や気持ちは日々変化するため、焦らずに自分のペースで選びましょう。また、自治体によっては乳房補整具（補整下着・パッド）への補助金制度が設けられている場合もあるため、公的支援の活用も視野に入れておくと安心です。

ポイント1：からだの状態に合った機能・素材

乳がん手術後は、手術方法や治療段階、回復の進み具合によって下着の選び方が変わります。
手術直後や治療中は肌が敏感になりやすく、普段気にならない縫い目やタグが刺激になることもあります。柔らかく通気性のある素材、縫い目のないタイプ、タグのないタイプなど、肌への負担が少ないものを選ぶと心地よく過ごせます。
体調や肌の状態に応じて見直すことも快適さを保つポイントです。

ポイント2：自分のきもちに合ったデザイン

治療中でも好みのデザインや色合いの下着を選ぶことは、生活の質（QOL）を維持・向上させるために大切なポイントです。乳がんの手術後は、体だけでなく心にも大きな変化が起こるため、「見た目の変化」へのストレスが積み重なりがちです。

こうした背景から、近年では「アピアランスケア（外見の変化に対応するケア）」の重要性が注目されており、自分の好きな色や素材を選ぶこと自体がセルフケアになります。
たとえば、お気に入りの色や素材の下着を選ぶことは、気分転換にも役立ちます。身につけて心地よいと感じるアイテムが、毎日の生活に小さな自信や快適さをもたらします。

ポイント3：納得できる価格帯

術後下着やブレストフォームは、メーカーや仕様によって価格が大きく異なります。
高価な製品も多いため、まずは無理のない範囲で購入し、体調やサイズが安定してから買い足すのがおすすめです。

また、自治体によっては乳房補整具（補整下着やパッド）に対して補助金制度が設けられている場合があります。補助を受けることで経済的な負担を軽減できるため、自身の住む自治体のホームページやがん相談支援センターで情報を確認してみてください。

※参考：「国立がん研究センターがん情報サービス」│相談支援センターを探す
※がん相談支援センター：全国にある、どなたでも無料・匿名で利用できるがんに関する相談窓口です。診断や治療の状況にかかわらずどんなタイミングでも、どんなことでも相談できます。

時期別｜乳がん術後の下着の選び方

乳がん術後の下着は、術後の経過状況により求められる機能や注意点が変わります。
たとえば、手術直後は着脱のしやすさや肌あたりのやさしさが最優先ですが、回復期には姿勢やシルエットを整える機能、治療中には肌への負担を減らす素材が大切になります。

それぞれの時期に合った下着を選ぶことで快適に過ごせるだけでなく、術後の不安やストレスを和らげることにもつながります。困ったときは、病院の医師や看護師、がん相談支援センターなどの専門窓口に相談してみてください。

手術直後から痛みが和らぐまでの下着

手術直後は痛みや腕の動きに制限があり、着脱しやすい前開きタイプの下着が安心です。
創部（手術で切開した傷口）への刺激を避けるため、縫い目が表側にあるものや縫い目のないタイプ、脇下の傷がこすれにくい袖付きタイプなど、肌あたりのやさしいものを選ぶのがおすすめです。
さらに、パッドは創部を衝撃から守るクッションの役割を果たすため、柔らかく軽いものを使ってみると安心です。

ソフトケアブラ

手術直後の敏感な胸をやさしく包むために設計された「ソフトケアブラ」は、フロントホックで着脱が簡単、シャツのような着心地で締め付け感を軽減します。縫い目を表側に出し、脇の傷に触れにくい仕様なので、創部をやさしく守りながら快適に過ごせます。

腫れや痛みが落ち着いてからの下着

腫れや痛みが落ち着いて体調が安定してくると、ノンワイヤーブラやワイヤー入りブラなど選択肢が広がります。

幅広ストラップや高めの脇設計、背中側の調節金具など、体に負担をかけにくい工夫がある下着を選ぶと、長時間の装着も快適です。パッドを収納できるポケット付きタイプなら、左右差やボリュームも自然に整えられます。
さらに、ワイヤー入りでもワイヤーが外側に付いていて肌あたりがやさしいタイプを選ぶと、術後のデリケートな胸元にも安心して使うことができます。

イサドラブラッシュ

幅広ストラップと立体カップでシリコンパッドをしっかり支える設計。3分割されたカップがサポート力とフィット感を高め、刺繍部分にメッシュ生地を用いることで通気性も良好。ポケット内側はやわらかな素材で肌あたりがやさしく、快適な着け心地です。

イサベル　ブラック

キャミソール型で胸元をしっかりカバーし、前傾姿勢でも胸壁にフィットする安心設計。シリコンパッドを安定して支えつつ、レースのデザインで見た目にもやさしさを添えます。

ふんわりコットンブラ

肌面が綿100％で、縫い目やテープが直接当たらない加工を施したやさしいブラ。術後の敏感な肌や体調がつらい時でも負担が少なく、パッドの出し入れもしやすい仕様です。

薬物・放射線療法中の下着

薬物療法や放射線療法の期間は、肌が非常に敏感になり、普段気にならなかった縫い目やタグが刺激となり、肌への負担になることがあります。

伸縮性があり体にやさしくフィットする素材や、縫い目・タグのないタイプを選ぶことで、かゆみや擦れを防ぎやすくなります。さらに、放射線治療中はマーカーの色移りが目立ちにくい濃い色の下着や、首周りを保護するネックカバーを活用すると、より安心して過ごせます。

術式・素材別｜ブレストフォームの種類と特徴

ブレストフォーム（パッド）は、乳がん手術後の「外見の補整」と「傷の保護」という2つの役割を担う重要なアイテムです。

術式や回復の段階、また希望する見た目や使用シーンによって、適した素材や形状が異なります。主な素材には「シリコン」「綿・ウレタン・スポンジ」「ジェル」などがあり、それぞれ質感・重さ・通気性・価格帯が異なるため、ライフスタイルや好みに合わせて選ぶことが大切です。

以下の表では、代表的な素材のメリット・デメリットやお手入れ方法、どのような人におすすめかをまとめました。

【素材】シリコン

【素材】綿・ウレタン・スポンジ

【素材】ジェル

素材によって洗濯や乾燥のしやすさ、交換の目安も変わるため、使用前に確認しておくと安心です。 夏場は通気性に優れた軽量素材、冬場は体温低下を感じにくいシリコン素材など、季節によって使い分けるのも快適に過ごすポイントです。

ナチュラ 1S

やわらかなシリコン素材を採用し、本物のバストに近い自然な揺れと感触を再現。温度変化を抑える「コンフォートプラス」配合で、長時間快適に使えます。

クッションパッド

軽く通気性に優れたスポンジタイプで、術後すぐや肌が敏感な時期でも安心。カバーやジェルパッドと組み合わせて使うことで、ボリューム調整や保護がしやすくなります。

ジェルパッド

シリコンより軽く柔らかく、胸の形に合わせて自然なラインを演出。単品でもセットでも使え、下垂気味のシルエットをやさしく整えます。

乳房全摘手術後のパッド

乳房全摘後は左右の重量バランスを整え、自然なシルエットを作ることが重要です。
そのため、ある程度の重みがあるシリコンパッドが推奨されます。

バスト全体をカバーする三角型タイプは、胸の形を均一に保ちやすく、肩や首への負担も分散しやすい設計です。さらに、カップ裏に大きなポケットが付いたブラジャーと組み合わせることで、パッドのズレを防ぎ、安定感を高めることができます。

乳房温存手術後のパッド

部分切除後は、左右差やボリューム不足を補うために薄型のシリコンパッドが適しています。
全摘用よりも軽量かつ柔らかいため、傷がまだ敏感な時期でも使いやすいのが特徴です。

左右差が少ない場合には、パッドを使わず厚みのあるカップ付きブラジャーで調整する方法もあり、日々の体調や外出シーンに合わせて使い分けると快適です。

乳房再建手術後のパッド

再建後の胸は、時期や方法によってボリュームや形が変わることがあります。
そのため、柔軟に対応できるパッドやブラジャーを選ぶことが大切です。特に自家組織（自身の体の組織を移植して再建する方法）で再建した場合は胸が脇に流れやすく、脇から支える構造や補整機能のあるブラジャーを組み合わせると安定しやすくなります。

左右差が出た場合は、薄型の補整パッドを追加して微調整するなど、自分に合ったフィット感を見つけることがポイントです。

乳がん術後の下着やブレストフォームに関するQ&A

Q1.術後の下着は、はじめに何枚くらい揃えればいいですか？

術後は体調やサイズが変わる可能性があるため、最初は洗い替え用として2〜3枚用意するのがおすすめです。
まずは少しずつ試して、体の状態が落ち着いてから必要に応じて追加購入すると失敗が少なく済みます。複数枚を揃えておくことでローテーションしながら使用でき、その結果として下着を長持ちさせることにもつながります。

Q2.ブラジャーやパッドのサイズは、どのように選べばいいですか？

基本は術前に使っていたブラジャーのサイズを目安にし、不明な場合はアンダーバストを計測して基準にします。
パッドのサイズは、残っている胸の大きさやブラジャーのカップサイズに合わせるのがポイントです。購入時には必ず試着し、アウターを着用した状態でシルエットを確認すると、より自然な仕上がりになります。

Q3.温泉やプールに入りたいときはどうすればいいですか？

一般的な綿やウレタンのパッドは水を含んで重くなるため、温泉やプールには向きません。
水着と合わせて使える専用のパッドや、肌に直接貼り付けられる粘着タイプのシリコンパッドなら、水中でも安心して使用できます。手術痕をカバーするための入浴着という選択肢もあり、周囲の目が気になる方も使いやすくなっています。

Q4.皮膚に直接貼るタイプのパッドはいつから使えますか？

粘着タイプのパッドは、剥がす際に皮膚に負担がかかるため、術後すぐの使用は避ける必要があります。使用開始の目安には個人差がありますが、傷の痛みがなくなり皮膚が落ち着く術後3ヶ月以降、一般的には6ヶ月〜1年以上経過してからが推奨されます。
使用中に赤みやかゆみなどの異常が出た場合は、すぐに使用を中止し、必要に応じて医師に相談することが大切です。

術後の下着・ブレストフォームのご相談はヤガミホームヘルスセンターへ

乳がん術後の下着やブレストフォーム選びは、体の回復や生活の質に大きく影響します。
手術直後・治療中・回復期など時期に応じた機能性を重視し、自分の気持ちとライフスタイルに合ったアイテムを選ぶことが、快適な毎日と自信の回復につながります。

ヤガミホームヘルスセンターではブレストフォームや術後用ブラジャーなどを取りそろえております。
また、スタッフと対面で相談できる来所相談や、ご自宅から気軽に相談できるオンライン相談もご利用いただけます。
来所相談では、実際に製品を試着してサイズや素材感を確かめることが可能です。

※試着をご希望の場合は必ず事前にご予約いただきますようお願いいたします。
※商品によっては試着品をご用意できない場合がございます。

術後の生活を少しでも快適に、そして前向きに過ごすために、経験豊富なスタッフと一緒にあなたに合ったアイテムを見つけてみませんか？

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状や治療内容については必ず主治医や専門医にご相談ください。

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